仄聞社ジャーナル

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「作品とカテゴリーの実践」関連ブックガイド①

本論文の関連記事:

 

「作品とカテゴリーの実践」に関連した書籍のブックガイドをお届けします。

とはいえ僕が紹介できる本は、以下のエントリで皆さんが紹介しているものばかりです。

なので僕は基本文献にしぼって、素人なりにおすすめの読み方と、拙稿に関係がある部分を紹介したいと思います。専門家による紹介は上記のサイトを参照してください。  

 【目次】

基本セット

フィルカル Vol. 3, No. 2 ―分析哲学と文化をつなぐ―

フィルカル Vol. 3, No. 2 ―分析哲学と文化をつなぐ―

  • 作者: 野上志学,渡辺一暁,長門裕介,高橋志行,吉川孝,谷川嘉浩,竹内未生,中井杏奈,青田麻未,しゅんぎくオカピ,八重樫徹,飯塚純
  • 出版社/メーカー: 株式会社ミュー
  • 発売日: 2018/09/30
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログを見る
 

 拙稿「作品とカテゴリーの実践」掲載してます。ジャンルや批評に興味がある方はブックガイド的にも読んでいただけると思います。

 

分析美学におけるカテゴリー論の古典です。拙稿の議論の出発点です。森さんが電子出版物として販売されているので、まずはこちらを購入することをおすすめします。

なお拙稿におけるウォルトンの位置づけはやや変わったものなので、その点はご注意ください。

 

批評について: 芸術批評の哲学

批評について: 芸術批評の哲学

 

分析美学からの批評論です 。拙稿の最重要文献になります。比較的読みやすいようにも思うので、おすすめです。拙稿では3章にハイライトしましたが、それ以外の章の議論も大変示唆的です。

 

エスノメソドロジー―人びとの実践から学ぶ (ワードマップ)

エスノメソドロジー―人びとの実践から学ぶ (ワードマップ)

 

日本語のEMの入門書の中では一番おすすめです。最も教科書らしいエッセンシャルな記述だと思います。

 

以上4冊はとりあえず買っていいと思います。

 

分析美学 

個人的におすすめの読み方等を紹介してゆきます。

 

現代アートの哲学 (哲学教科書シリーズ)

現代アートの哲学 (哲学教科書シリーズ)

 

 タイトルは現代アートですが、分析美学の入門書でもあります。ステッカー本の前に1冊という方にはこちら。熟読するというより、トピックを大まかに把握する方がいいかもしれません*1 フーコー等の現代思想も参照しているので批評読者には馴染みやすいかも。

 

ビデオゲームの美学

ビデオゲームの美学

 

 ビデオゲームを分析するための理論的枠組を、主に分析美学やゲーム研究を参照して整理・考察した著作。ビデオゲームに興味がある方であれば、分析美学の入門書としても読めるかと思います。

pp.46-48にウォルトンのカテゴリー論の紹介があります。正統的な位置づけはこちらで確認してください。

 

分析美学入門

分析美学入門

 

 分析美学の教科書の決定版です。大部の著作なので興味がある箇所から読むのもおすすめです。議論の概略を知ることができます。サポートページはこちらです:『分析美学入門』紹介サイト

 

分析美学基本論文集

分析美学基本論文集

 

 こちらは歴史的な論文等もあり読みやすさは色々なので、教科書としてはステッカー本の方がすぐれています。ですが興味がある分野についてステッカー本と本書の関連した章をピックアップして読み進めてゆくのもありでしょう*2 。また巻末に解説があるので参考になります。

おなじことは以下に紹介する本にもあてはまります。あまり読む順番にこだわらず、興味をもてそう/読みやすそうな順で読んでゆくことをおすすめします(最初は興味をもつことが大事なので)。

 

フィクションの哲学 〔改訂版〕

フィクションの哲学 〔改訂版〕

 

フィクション論を扱った日本語文献です。無印版と改訂版があり内容が違うのですが、改訂版の7章ではウォルトンの議論と描写の哲学と結びつけています。

 

フィクションとは何か―ごっこ遊びと芸術―

フィクションとは何か―ごっこ遊びと芸術―

 

ウォルトンのフィクション論の代表作はこちらです(最新の著作ではないです)。『フィルカル』No.3 Vol.2のコンテンツツーリズム論や、Vol. 2 No. 2のアイドル論などで参照されています。

フィクション論についてはこちらを参照してください:

[fiction] フィクション論の古典なり基礎文献的なもの - うつし世はゆめ / 夜のゆめもゆめ

 

画像と知覚の哲学―現象学と分析哲学からの接近

画像と知覚の哲学―現象学と分析哲学からの接近

 

 4章で描写の哲学、10章にて「芸術のカテゴリー」を扱っています。それに加えて11章も興味深く読みました。また、

知覚と判断の境界線:「知覚の哲学」基本と応用

知覚と判断の境界線:「知覚の哲学」基本と応用

 

 の6章は美的性質の知覚を扱ってます。

 

フィルカル Vol. 1, No. 2 ―分析哲学と文化をつなぐ―

フィルカル Vol. 1, No. 2 ―分析哲学と文化をつなぐ―

  • 作者: 高崎将平,要真理子,松永伸司,稲岡大志,大谷弘,モリス・ワイツ,長門裕介,飯塚純
  • 出版社/メーカー: 株式会社ミュー
  • 発売日: 2016/09/30
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログを見る
 

ジャンルは芸術の下位概念とされることもあり、ジャンル論と芸術の定義論は深い関係があります。本書所収のモリス「美学における理論の役割」は芸術の定義の不可能性を論じた古典的論文です。

拙稿ではジャンルが様々に訂正・改訂されることを論じましたが、当然ジャンルもモリスのいう「開かれた概念」に相当し、おなじように記述的用法(カテゴリー分け)と評価的用法(価値づけ)の2つがありえるでしょう。

訳者の松永さんが単独でも販売しています(解説もあります):

M. Weitz「美学における理論の役割」|まつなが|note

 

ありふれたものの変容:芸術の哲学

ありふれたものの変容:芸術の哲学

 

 こちらは逆に芸術を定義しようとした著作です。

拙稿では作品記述とカテゴリーの関係に注目しましたが、むしろ作品記述とカテゴリーに結びついた概念(主題やモチーフ等)の関係を強調した方がよかったかな、という反省があります。

本書第5章では、作品を芸術的な概念のもとで解釈することで、作品が芸術作品として同定される、という議論がなされています。そのまま当てはめることはできませんが、拙稿にとっても興味深い議論であるように思います。

なおステッカー本のp.171に本書の芸術定義のキャロルによるまとめが載っています。

おまけ:

アート・ワールド

アート・ワールド

 

分析美学の芸術論を踏まえた社会学的研究。論者によって「アートワールド」の意味は異なる点に注意。ディッキー「芸術とはなにか」(『分析美学基本論文集』所収)とあわせて読みたい

 

文学理論

拙稿ではまったく言及していない分野ですが、(とくに読書行為論は)拙稿の議論と近いものがあると思うので、比較していただけるといいかと思います。

 

物語のディスクール―方法論の試み (叢書記号学的実践 (2))

物語のディスクール―方法論の試み (叢書記号学的実践 (2))

 

 文学理論といえばナラトロジー。最近(でもないですが)現代日本文学で「移人称小説」が話題になりましたが*3、すでに指摘されているように理論的には本書で出尽くしています。そんな意味でも必読の1冊ですが、絶版につき古書価格が高騰しています*4 ですが続編の

物語の詩学 ─続・物語のディスクール 叢書記号学的実践 (3)

物語の詩学 ─続・物語のディスクール 叢書記号学的実践 (3)

 

 は新品で全然買えるし、訳者による前著の解説もついてるので、こちらを購入するのもありかもしれません。また、

ナラトロジー入門―プロップからジュネットまでの物語論 (水声文庫)

ナラトロジー入門―プロップからジュネットまでの物語論 (水声文庫)

 

 はその後の議論も踏まえて整理された解説になっているので、おすすめです。

この本の著者は、作品の読み方を提示する解釈学と、作品のメカニズムを明らかにする詩学を分けており、ナラトロジーは後者に属しています。個人的には、ある意味では両方の視点をもつ(作品の解釈過程における「語り」のあり方を考える)ことが重要かなと思っています。

 

行為としての読書―美的作用の理論 (〈特装版〉岩波現代選書)

行為としての読書―美的作用の理論 (〈特装版〉岩波現代選書)

 

 そんなわけで読書行為論の古典です。こちらも絶版につき古書高騰です。この本も後続の議論が盛り上がった1冊なので、なんとかしてほしいですね。

作者が様々な参照枠から要素を選択しつつテクストを製作する一方、読者も準拠枠をもとにテクストの特定の要素を選択しつつ読む、そんな両者の過程を論じています。拙稿の議論と通じる部分は多いと思います。

代わりの1冊としてはおなじ著者の他の本より、

挑発としての文学史 (岩波現代文庫)

挑発としての文学史 (岩波現代文庫)

 

の方がいいかもしれません(文庫だし)。 

 日本語の読書行為論の入門書としては、

読者はどこにいるのか--書物の中の私たち (河出ブックス)

読者はどこにいるのか--書物の中の私たち (河出ブックス)

 

が挙げられますが、ちょっと前の著作ということもあり、正直いって癖の強い1冊です。この本は「現代思想が国文学(系テクスト論)にどのように影響を与え、どのような作品分析に帰結したか」という視点で読むといいと思います。そうすれば作品分析を検証することで理論の側の問題点も検討できます。

 

認知物語論キーワード (IZUMI BOOKS)

認知物語論キーワード (IZUMI BOOKS)

 

 読者の解釈過程に着目する方向性としては、こちらの方がいいと思います。認知物語論は、ある意味では詩学と解釈学の接合ともいえなくもない。テクストの要素選択と主題の相互関係を指摘しているのも拙稿に近いラインです。

ただし本書だけでテクスト分析をするにはやや物足りないです。とくに、個々の概念/イメージがいかにして成り立っているかの議論が必要に思いました。認知物語論は最近のまとまった成果でもあるので、じっくり検討したいと思います。

 

影響の不安―詩の理論のために

影響の不安―詩の理論のために

 

 これも絶版ですね。すいません絶版ばかりのリストで。

 「シェイクスピアに与えたT・S・エリオットの影響」というコピーで有名な(?)著作ですが、ある作品が先行作品を踏まえて作られる一方、後続作品によって先行作品の解釈枠も形作られる、という言い方もできると思います。つまり、後続作品と先行作品は相互的な関係になっています。

これは当然ジャンルにも当てはまる話ですが、拙稿ではこうした関係を(後続作品-先行作品の関係にではなく)作品をあるジャンルとみなす実践においてみいだしています。

参考:ハロルド・ブルーム「影響の不安」 - モナドの方へ

 

文学をめぐる理論と常識

文学をめぐる理論と常識

 

 「作者の死」等の文学理論と常識的な議論の中庸を目指すという立ち位置は、キャロル本と比較されてもよいような気がします。

 

エスノメソドロジー 

導入になりそうな研究(というより個人的におもしろかったもの)をざくっと紹介していきます。

 

見ること・聞くことのデザイン (メディア理解の相互行為分析)

見ること・聞くことのデザイン (メディア理解の相互行為分析)

 

拙稿の重要参考文献①。メディアのエスノメソドロジー研究です。メディアの表象そのものを対象とした分析がいくつかあり(CMやマンガ等)、大変参考になりました。モノのカテゴリーの議論やCM論争の分析等、拙稿でも複数箇所参照しています。

 

概念分析の社会学 ─ 社会的経験と人間の科学

概念分析の社会学 ─ 社会的経験と人間の科学

 

ハッキングの歴史的存在論(「ループ効果」)とウィトゲンシュタイン派EMの概念の論理文法分析(「概念連関」)の交点に位置する社会学研究。続編とあわせて、ナビゲーションが大変勉強になります。

文学研究者なら「第7章 優生学の作動形式」は興味深く読めると思います。おすすめ。

 

概念分析の社会学2: 実践の社会的論理

概念分析の社会学2: 実践の社会的論理

 

『フィルカル』No.3 Vol.2掲載の合気道論では、合気道家が独特のものの見方をもっていることが示唆されていましたが、 13章はまさにそうしたものの見方が正面から社会学研究の対象になっているので、ぜひつづけて読まれることをおすすめします。

また14章は、観光における「見ること」に結びついた活動を実践に即して記述しています。たとえば「記念撮影」は(同行者と)「同じものを見る」活動であるとどうじに、「過去の旅行を振り返る」契機にもなりうるのです。この論文は参与観察をしているので一見ハードルは高そうですが、聖地巡礼動画の分析にとっても示唆的だと思います。

『フィルカル』No.3 Vol.2にもコンテンツツーリズム論と、環境美学ご専門の方の学会報告が掲載されていますが、「観光」も美学のテーマになっています。

フィルカルへの寄稿

Mami AOTA on Twitter: "おととい日大で行ったワークショップ「美的経験、再考!」でのわたしの発表の資料を公開します

 

語る身体・見る身体

語る身体・見る身体

 

6章にゲームプレイ実践のビデオ分析があります。参加者がゲーム的な概念を踏まえながら、ゲーム画面内と外の二重の相互行為をおこなっている様子が詳述されています。ゲーム実況動画の分析のヒントになるんじゃないでしょうか。

 

実践の中のジェンダー?法システムの社会学的記述

実践の中のジェンダー?法システムの社会学的記述

 

 拙稿の重要参考文献②。じつはEMで最初に読んだのがこの本なのですが、ルーマンのシステム論*5、言語行為論(オースティン、デリダ、サール)、ジェンダー論(ジュディス・バトラー)、等々、様々な論点で影響を受けました。思想系の読者からみても接点が色々あると思うので、WM『エスノメソドロジー』の前にこの本を覗いてみるというのもありかもしれません。

 

心と行為―エスノメソドロジーの視点 (現代社会学選書)

心と行為―エスノメソドロジーの視点 (現代社会学選書)

 

ウィトゲンシュタインエスノメソドロジーの著作。序章が議論の見取り図になっており、「概念分析」の理解に役立ちました。

 

エスノメソドロジー―社会学的思考の解体

エスノメソドロジー―社会学的思考の解体

 

 初期エスノメソドロジー研究。サックス「ホットロッダー」が有名ですね*6 バラエティに富んだ論文が載っていて、小説のように読めるものもあるので*7、まずは読んでみることをおすすめします。

 

日常性の解剖学―知と会話

日常性の解剖学―知と会話

 

 こちらはより理論的な初期EM研究。ドキュメント解釈法のガーフィンケル論文、成因カテゴリー化装置のサックス論文、会話の終了プロセスを論じたサックス・シェグロフ論文等、基礎文献を所収しています。最後の論文が比較的読みやすいかもしれません。

 

 

まだいくつか紹介したい本や論文があるのですが、長くなったので次回のおたのしみに!

*1:報告文/反省文の対比(p.90)等、示唆的な論点も色々あります

*2:たとえばフィクション論について、ステッカー本の8章と本書所収のウォルトン「フィクションを怖がる」を先に読む

*3:渡辺直己小説技術論』や佐々木敦新しい小説のために』等

*4:僕は古書で買ってしまいましたが、この本はここから様々な議論が展開された1冊なので、文庫化等されるべきだと思います

*5:小宮友根『実践の中のジェンダー』 - 西東京日記 IN はてな にて紹介されています

*6:今ちらっとみたらフロイトのエディプス・コンプレックス論に批判的に言及してました

*7:ガーフィンケルの小説「カラートラブル」はこちらで読めます